相続税の課税対象となる財産からは,被相続人の債務を控除することができますが(相続税法13条),保証債務については通常「確実」(同法14条)な債務ということはできない(主債務者が債務を履行すれば,保証債務を履行する必要はない)ので,原則として控除できません。
逆にいえば「確実」な債務であれば控除の対象となるのですが,この点,相続税法基本通達「主たる債務者が弁済不能の状態にあるため、保証債務者がその債務を履行しなければならない場合で、かつ、主たる債務者に求償して返還を受ける見込みがない場合」には控除可能であるとしています。
この通達では「弁済不能」という抽象概念が用いられていますが,判例上その解釈はかなり厳しいもの(控除を認めない方向)とみるべきでしょう。異論の余地は十分にあるところですが,通常は債務超過というだけでは,「弁済不能」ということはできず,相続開始時点において破産手続等の法的手続きが開始しているという場合に限られるとみるべきでしょう((東京地裁昭和54年5月10日判決,東京地裁昭和59年4月26日判決等 )。
相続税法
(債務控除)
第十三条 相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。以下この条において同じ。)により財産を取得した者が第一条の三第一項第一号又は第二号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。
一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)
二 被相続人に係る葬式費用
第十四条 前条の規定によりその金額を控除すべき債務は、確実と認められるものに限る。
相続税基本通達
(保証債務及び連帯債務)
14-3 保証債務及び連帯債務については、次に掲げるところにより取り扱うものとする。(昭57直資2-177改正、平15課資2-1改正)
(1) 保証債務については、控除しないこと。ただし、主たる債務者が弁済不能の状態にあるため、保証債務者がその債務を履行しなければならない場合で、かつ、主たる債務者に求償して返還を受ける見込みがない場合には、主たる債務者が弁済不能の部分の金額は、当該保証債務者の債務として控除すること。
(2) 連帯債務については、連帯債務者のうちで債務控除を受けようとする者の負担すべき金額が明らかとなっている場合には、当該負担金額を控除し、連帯債務者のうちに弁済不能の状態にある者(以下14-3において「弁済不能者」という。)があり、かつ、求償して弁済を受ける見込みがなく、当該弁済不能者の負担部分をも負担しなければならないと認められる場合には、その負担しなければならないと認められる部分の金額も当該債務控除を受けようとする者の負担部分として控除すること。