先日のコラムで試用期間中であっても,簡単に解雇することはできない旨を説明しました。しかし,実際問題,採用面接段階で社員の能力適性を見極めることは極めて困難であり,採用から数週間した時点で雇用契約を見直したいというケースも多いと思います。
そこで,考えられるのは,最初から期限の定めのない雇用契約を締結するのではなく,最初は有期の雇用契約をするという方法です。有期の雇用契約であれば,最初に定めた期間が終了すれば,当然に雇用契約が終了するため解雇の有効性が問題となることがないからです。
しかし,試用期間中の解雇が難しいから,形式的に有期雇用契約を締結して,実質的に試用期間中の解雇権を確保するというようなやり方では,三菱樹脂事件の判例の趣旨に反することになりそうです。この点,最高裁平成2年6月5日判決(神戸弘陵学園事件)は,「使用者が労働者を新規に採用するに当たり、その雇用契約に期間を設 けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するための ものであるときは、右期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合 意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は 契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当である。」と判示しています。つまり,形式的に有期雇用契約を締結して,実質的に試用期間中の解雇権を確保するというようなやり方は許されない,ということになります。
とはいえ,あらゆる有期雇用契約がそのようにみなされるというのではもちろんありませんから,工夫次第では有期雇用契約から期限の定めのない雇用契約への移行は,採用リスクを軽減する手法として検討されてもよいと思います。