消滅時効は権利を行使することができる時から進行します(民法166①)。では,分割払いの場合に,消滅時効の時効期間をどの時点から計算するのでしょうか(起算点の問題)。
通常,金銭消費貸借契約書には,期限の利益喪失約款が記載されています。期限の利益とは言い換えれば,分割で支払う利益(一括で支払わなくても済む利益)ということができますが,この期限の利益喪失約款には大きく2種類に分けることができます。
一つは,消費者金融会社の約款によくみられるもので,分割金の支払いを怠ると「当然に」期限の利益を喪失するというものです。このような約定となっている場合には,分割金の支払いを怠った時点で,債権者は債権全額について権利を行使できるようになるため,この時点が消滅時効の起算点ということになります。
もう一つは,銀行の消費貸借契約の約款によくみられるもので,分割金の支払いを怠った場合でも当然に期限の利益を喪失するのではなく,「銀行の意思表示により」期限の利益を喪失するというものです。この場合は,銀行からの期限の利益を喪失させる意思表示があったときから債権全額について,消滅時効が進行を始めます(最判昭42.6.23)。
民法
第百六十六条 消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。